LOVERSION Music レビュー

麗しき音楽の世界 サマー・コンサート2012

コンポーザーピアニスト 和田七奈江 編

photo_01

素晴らしい音楽と美しい演奏者たち

written by 和田七奈江


 さて、、前回のスプリング・コンサートに引き続きまして8月24日にサマー・コンサートが決行されました。春の次は夏、夏の次は秋・・・、几帳面に継続を試みる自分に、コツコツ肌のA型気質を感じずにはいられません。前置きは良しとして...、今回は春の出演者やラヴァージョンの演奏家仲間もお客様としてご来場いただき、家族的ではありながらも専門的な批評の目も感じられる、言わば演奏し甲斐のあるコンサートに感じました。もちろん演奏者にとっては目の前のお客様が1人でも1000人でも、演奏への熱は何も変わりません。周囲がどうであれ舞台上の演奏家は常に音楽のみと向い合っているものです。しかしながら、主催者としての顔も持つ私としては、出来るだけたくさんの素晴らしいお客様にご来場いただけることがこの上ない励みとなります。そんなわけで、始めてご来場いただいたお客様、毎度リピーターでお越し下さるお客様、暑い中を誠にありがとうございました。

 なんと、この度は意表をついて、ピアノ・オンリーの演奏会ではなくチェロ&ピアノも取り入れたクラシック色の強い演奏会となりました。出演者は全員女性。音楽家としてはもちろんのこと女性としても美しい、ピアニスト・伊藤実希、チェロ・植木美帆&ピアニスト・山口亜弥子が私と共演くださいました。何事も中身が重要ではありますが、やはり外見がいいのは、いいものですね。

 今回は、まず私が2曲ほど一番手に弾きました。体や手が大きくない私にとって、上手に調律されたスタインウェイB−211サイズは、とても弾き心地の良いものに感じられます。奏者の演奏技術は大事ですが、その技術について来られるレベルの楽器が必要ということは言うまでもありません。2番手の伊藤実希さんもそのような事を知っているかどうか、、それはわかりませんが、実希さんが弾いたリスト作曲のコンソレーション全曲は、申し分のない美しい音楽として聴衆に届いたようです。オーディションでの演奏も6月に行ったガラ・コンサートでも、実希さんに確固たる演奏の土台があることは明らかでした。この度は選曲の良さも相まって、よりアーティスティックな世界を表現されたのではと推察します。

 実希さんが終わり、また私が登場。。私には演奏する上で大切だと思っていることが3つあります。それは、「力を抜くこと、自分の出す音を聴くこと、余計な気をつかわず音楽に没頭すること」。力を抜く事と自分の出す音を聴く事は連動しているような気がします。「力を抜けば自然と耳に音が入ってくる」そういうものです。また、指の動きが悪い人は指に余分な力が入っている可能性が高いですね。それだけ力を抜くことは重要に思います。そして3つめの余計な気をつかわず音楽に没頭する…演奏者はイライラしてはいけないのです。終始、良い心でいるために、馬耳東風の如くポワ〜ンとしてみたり、天然ボケのような雰囲気をまとって人をわざと寄せ付けないことがよくあります。音楽家は、ちょっと変な人、、ぐらいがちょうどいいのです。私はこの3点を出来るだけ全うできるように努めたつもりです。

 2部は、いよいよ美人Duoのお二人、チェロの植木美帆&ピアノの山口亜弥子です。美人Duoと聞くだけで興味を持ってしまう人もいるのではないでしょうか?アーティスト写真より実物のほうが美しいというのは稀ですが、彼女達に関しては、そうなのです。。ただ、あいにく私は舞台裏の壁越しでしか彼女達の音楽を聴いていないために当日の演奏についてはハッキリとした感想を言えません。しかし、そこは音楽ジャーナリストの池田卓夫氏が専門的な目線でキッパリ書いています。以下の「池田卓夫編」でご覧頂けます。

 最後に、、コンサートにお付き合い頂いた司会の音楽ジャーナリスト・池田卓夫さん、おつかれさまでした。池田氏はクラシック系の音楽全般に詳しいジャーナリストのため、単なる司会のみならず舞台上での細かいセッティングまでお気遣して下さいます。頼りにせずとも頼りになる…。今後もどうか私を見捨てず、かゆい所には手を差し伸べて頂けますか。よろしくお願いします。

※コンサート模様の写真はLoversion Tokyo facebookページでご覧けます。

音楽ジャーナリスト・池田卓夫編


ラヴァージョン・コンサート・シリーズ「サマー・コンサート2012」が8月24日、汐留ホールで開かれた。主宰のコンポーザー&ピアニスト、和田七奈江は前半の最初(No Control , Tempest )と最後(濡れた花嫁、Love Ballade)に自作を2曲ずつ、計4曲を弾いた。相変わらず独自の感性、奏法でオンリーワンの世界へ誘っていく。その間もピアノ・ソロ。桐朋学園、 ショパン音楽大学(ワルシャワ)に学んだ伊藤実希は2回連続の参加だ。前回のショパンに対し、今回はリスト。第3番だけ突出して有名なリストの 「コンソレーション(慰め)」の全6曲を端正に仕上げた。6曲まとめて1作という起承転結をうまくとらえ、客席の集中を保たせた点、わずか数カ月 の間の進歩に目をみはる。後半は国立音大からノルウェーの大作曲家グリーグの出身地、ベルゲン大学のグリーグ音楽院へと進んだ山口亜弥子がチェロ の植木美帆とともに4曲を弾き、実質上のハーフ・リサイタルとなった。2人は神戸の演奏会で2年前に知り合い、デュオを組んでいる。フォーレの 「シチリアーノ」、クライスラーの「シンコペーション」、サン=サーンスの「白鳥」と小品で聴き手の耳をなごませた後、演奏時間30分におよぶ ショパンのチェロとピアノのためのソナタの世界へ一気に引き込んだ。植木のチェロは細かなミスをものともせず、音楽を前へ進めていくタイプ。もう 少し音程が安定すれば、と思う瞬間がないわけではなかった。山口のピアノは強く華やかな場面で予想以上のスケールを発揮する半面、弱音でじっくり 奏でる部分は抑え過ぎるのか、歌のラインが途切れがちになるのが残念だった。だが全体では、素晴らしい室内楽の時間が成立した。