LOVERSION Music レビュー

大人のイブニングコンサート

音楽ジャーナリスト 池田卓夫編

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※写真=池田卓夫


大人のイブニングコンサート 10/18 2014
(池田卓夫=音楽ジャーナリスト)



土曜日夕方の渋谷・松濤、タカギクラヴィアのサロンで開かれた面白いコンサートだった。コンポーザー&ピアニストでLOVERSIN TOKYO代表取締役の和田七奈江は前半の最後に自作を2曲(Go TogetherとLove Ballade)弾くだけだったが、相変わらずの存在感と集中力。後はすべて濱崎洋子がソロ、歌とのデュオともピアノを受け持った。リストの「メフィスト・ワルツ第1番」では難技巧曲を前に構え過ぎたのか、フレーズとフレーズがつながらないので歌のアーチが消えてしまった。暗譜が飛び、同じフレーズを繰り返したところもあった。後半冒頭のドビュッシー、「ベルガマスク組曲」からの「月の光」にそうした瑕はなく、安心して聴けた。ソプラノの阿部朋子とは前半にヴァヴィロフの「カッチーニのアヴェ・マリア」、プッチーニのアリア3曲、後半に日本歌曲と濱崎編曲の「アナと雪の女王」メドレー。すでにシリーズ常連となった阿部はサロンコンサートのツボを良く心得ていて、小さな空間のお客様一人一人に心をこめ、優しく歌いかける。木下牧子作曲の「さびしいカシの木」で落涙した女性客がいらした。もう1人の歌のゲストは初登場となるミュージカルスターで唯一の男性、四宮貴久(しのみや。あつひさ)。国立音大の声楽科を卒業して渡米、ミュージカルの俳優&ダンサーとして日米で活躍しているという。「王様と私」「レ・ミゼラブル」の定番をしっかり披露した後、「きみはいい人チャーリーブラウン」の「サパータイム」でスヌーピーに扮し、歌って踊っての大熱演。もちろん、お客様はいつもと違う刺激に大満足されていた。最後は阿部、四宮の2人と濱崎で「アメイジング・グレース」。素敵な余韻を残して、幕を閉じた。