LOVERSION Music レビュー

楽しきピアノの世界 オータム・コンサート2012

音楽ジャーナリスト・ 池田卓夫 編

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日曜日は再びコンポーザー&ピアニスト、和田七奈江さんの「ラヴァージョン・コンサート・シリーズ」の司会を汐留ホールで務めさせていただいた・・・

今回は和田さんのほか、京都の橋本幸代さん、東京の樋口俊明さんと友人で声優のSteRAさんの2組が参加。橋本さんのパワフルに弾ける名曲のアレンジと自作、樋口さん自作のロマンティックな台本をSteRAさんが語り歌い、優しくピアノが寄り添うサティ&アジアの作曲家のポプリ、それぞれに聴きごたえがあった。スティーヴィー・ワンダーの「Sir Duke」を橋本さん自身の編曲で奏でる前の語りで拍手を促すと、客席が一糸乱れず、楽しそうにリズムを打ち、素晴らしい一体感が生まれた。樋口さんにはこれまで、繊細な感性をどうピアノに託して伝えるかの方法を模索しているかのような趣があったのだが、言葉=台本と一体になったとき、はるかに強い説得力を発揮して、ピアノも格段に良く鳴ることがわかった。もう少し、この路線を究めてみたはどうだろう?和田さんが弾いた自作4曲のうち、「11月の木漏れ日」「さよならショパン」はラヴァージョンのオーディションで常に課題曲として二者択一される定番。和田さんの耳は非常に鋭敏、いちど聴いたら刷り込まれてしまう傾向にあるため、昨日の演奏からは過去さまざまのオーディション受験者の痕跡が聴こえ、司会者席の私は少し当惑した。これをもう一度消し去り、改めて和田さん自身の世界が構築された時、オリジナル曲はより深く、大きな世界を獲得するのだろうな……。

これまで特にプログラム冊子に明記したり、口頭で伝えたりしてこなかったのだが、演奏本番中の写真撮影、録音、録画は主催者の許可を得たもの以外、肖像権や著作権の関係で難しい。今回、特定の出演者の関係者数人が最前列に陣取り、せわしくカメラやビデオを操作している姿に驚いた。今後はあらかじめの申告や調整が必要かもしれない、と思った。