バレンタイン コンサート パーティー2013
コンポーザー・ピアニスト 和田七奈江 編
2月14日、バレンタインデー。この日にコンサートをしたのは初めてです。コンサートと言いましても40名様限定の飲食付きパーティーです。ピアノは立派なコンサート・スタインウェイ・グランドピアノ。円卓テーブルを囲み、和やかにワイングラスを傾けながら、ほのぼのとしたカジュアル・エレガントで臨みました。安価で大きな市民ホールに大人数のお客様を詰め込む営業スタイルとは違い、心ばかりながらも極贅沢な空間であったと思います。
演奏者は私のほかに、上野学園大学ピアノ科の川端優也さん(2013年に卒業)、朗読芸とピアノの融合に挑戦中の樋口俊明さん、お母さん業と兼業のソプラノ阿部朋子さん。すべて、LOVRSION TOKYOオーディションで合格した人達です。あと、おまけで1人、飛び入り参加のピアニスト・安達朋博さん。安達様にはお客様としてご出席いただいたわけですが、司会者である池田卓夫さんの指示により、1曲ご披露という運びになりました。パーティー形式は予期せぬハプニングがあって楽しいものです。
まず、川端優也さん。2013年の春にようやく上野学園大学を卒業。おめでとうございます。2/14は前回のガラコンサートの時と同じR.シューマンの幻想曲第一楽章を弾いてくれました。演奏技術も市場に出てしかるべきものですし、曲に対する情熱を伝えるだけの自己表現力も十分に兼ね備えています。そして、川端優也くんのレパートリー、経歴、上品な物腰、、どれをとっても、彼は正統派クラシックを重んじる正統派のクラシックピアニスト…と思わされるところですが、今の時点でそう決めてしまうのは、あまりにも浅はかだと私は思っています。今、ようやく学校でのアカデミックな勉強を終え、また1つ新しい世界へ出て、これから何も変わらないと言えば、それは嘘になるはずです。おそらく冒険心を持って色々なジャンルの物事に取り組むことになるのでは…。長い目でお付き合いしたいと思います。
樋口俊明さんは、自分のオリジナリティーに率直に向かい合い、自分らしく地道に確実な取り組みをしている人です。言葉と音楽の融合芸術の魅力に気づいた彼は、この日もバレンタインにふさわしい「愛」にちなんだ作詞とピアノ曲の組み合わせで会場をふんわり温めてくれました。日常的には中華料理屋さんのピアノ奏者としても活躍中。本人曰く、「今回2/14はとても演奏しやすかった」とか。周囲が飲食ムードの状況でも気にせずに弾けるというキャラは重宝できますし、レストランで演奏することで店の売上げに貢献できるというのも1つのやりがいかもしれません。あとは更に、周囲に訴えることの出来るアーティストとして、色々なサイズのコンサートで活躍する経験を積み重ねる事が本人にとっての肥やしになると思います。
さて、飛び入り参加の安達朋博さん。高卒後にクロアチアへ留学し、今クロアチア作品の演奏に燃えています。この日もクロアチアの「バラ」という曲を弾いて下さいました。司会者の指示とは言え、人のところへ来て弾いてしまうとは、人懐こくて可愛い人だと思いました 笑。高卒後に故郷を離れて異国へ旅立ったという朋博さん。若い時からいろんな人に助けられて愛され上手な術を持っています。そして、その経緯は、まるで私自身の姿を投影しているかのよう。なんだか、うつむきたくなるような気恥ずかしさを感じます。そんな御縁で3月にあったリサイタルにも伺いました。演奏はそれ相当なものでありながら、印象に残ったのは舞台や紙面上で弱みを語る彼。仕事中に泣き言を言って周囲を不安にさせる男性は、信用を失ってしまうかも...。スランプに負けないように、これからは感性豊かなご自分の体質にあった事を更に大事にされるといいかもしれません。
最後はソプラノ専門の阿部朋子さん。声楽家は伴奏者との相性が大切であるということが、阿部朋子(ソプラノ)・高山幸子(伴奏)組みを見ていて改めてよくわかります。比較的、繊細な歌声を持っている阿部朋子さんを、根気強く、力強く支えているピアノ伴奏者の高山幸子さん。2人の息はとても合っているので、末永く仲良くしてもらえればと思います。この日は、一般的によく知られるプッチーニのオペラ歌曲「私のお父さん」のほか、「霧と話した」「落葉松」という渋い日本歌曲も歌いました。歌の内容は「愛」のストーリーではあるものの、放縦な愛情表現とは違い、わびさびに満ちたひっそりと忍ぶ愛。今度は、是非、ライトの落ちた暗いホールでしんみり味わってみたいものです。朋子さんの切々とした声が私たちの胸の奥に響くことでしょう。
わたくしは相変わらず自分の好きな曲を弾いて、好きな事をしています。自分本位でマイペースですから、パーティーの世話焼きも、細かい雑用も、すべて自分の好きでやっています。貧乏臭いのは好きじゃないのですが、仕事を通して意外にもマメな自分を発見しました。音楽ジャーナリストの池田卓夫さんには、毎度お世話になっています。池田氏の言葉の切れ味はさることながら、司会/進行…いわゆる現場の仕切人としての立ち回りの良さ、演出上手な愛嬌、、すべて貴重な力として感謝します。
LOVERSIONも私も、毎年毎年、成長していく所存です。丁寧な気持ちで丁寧な行動を心がけ、目の前にある「心」を大切にしたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
演奏者は私のほかに、上野学園大学ピアノ科の川端優也さん(2013年に卒業)、朗読芸とピアノの融合に挑戦中の樋口俊明さん、お母さん業と兼業のソプラノ阿部朋子さん。すべて、LOVRSION TOKYOオーディションで合格した人達です。あと、おまけで1人、飛び入り参加のピアニスト・安達朋博さん。安達様にはお客様としてご出席いただいたわけですが、司会者である池田卓夫さんの指示により、1曲ご披露という運びになりました。パーティー形式は予期せぬハプニングがあって楽しいものです。
まず、川端優也さん。2013年の春にようやく上野学園大学を卒業。おめでとうございます。2/14は前回のガラコンサートの時と同じR.シューマンの幻想曲第一楽章を弾いてくれました。演奏技術も市場に出てしかるべきものですし、曲に対する情熱を伝えるだけの自己表現力も十分に兼ね備えています。そして、川端優也くんのレパートリー、経歴、上品な物腰、、どれをとっても、彼は正統派クラシックを重んじる正統派のクラシックピアニスト…と思わされるところですが、今の時点でそう決めてしまうのは、あまりにも浅はかだと私は思っています。今、ようやく学校でのアカデミックな勉強を終え、また1つ新しい世界へ出て、これから何も変わらないと言えば、それは嘘になるはずです。おそらく冒険心を持って色々なジャンルの物事に取り組むことになるのでは…。長い目でお付き合いしたいと思います。
樋口俊明さんは、自分のオリジナリティーに率直に向かい合い、自分らしく地道に確実な取り組みをしている人です。言葉と音楽の融合芸術の魅力に気づいた彼は、この日もバレンタインにふさわしい「愛」にちなんだ作詞とピアノ曲の組み合わせで会場をふんわり温めてくれました。日常的には中華料理屋さんのピアノ奏者としても活躍中。本人曰く、「今回2/14はとても演奏しやすかった」とか。周囲が飲食ムードの状況でも気にせずに弾けるというキャラは重宝できますし、レストランで演奏することで店の売上げに貢献できるというのも1つのやりがいかもしれません。あとは更に、周囲に訴えることの出来るアーティストとして、色々なサイズのコンサートで活躍する経験を積み重ねる事が本人にとっての肥やしになると思います。
さて、飛び入り参加の安達朋博さん。高卒後にクロアチアへ留学し、今クロアチア作品の演奏に燃えています。この日もクロアチアの「バラ」という曲を弾いて下さいました。司会者の指示とは言え、人のところへ来て弾いてしまうとは、人懐こくて可愛い人だと思いました 笑。高卒後に故郷を離れて異国へ旅立ったという朋博さん。若い時からいろんな人に助けられて愛され上手な術を持っています。そして、その経緯は、まるで私自身の姿を投影しているかのよう。なんだか、うつむきたくなるような気恥ずかしさを感じます。そんな御縁で3月にあったリサイタルにも伺いました。演奏はそれ相当なものでありながら、印象に残ったのは舞台や紙面上で弱みを語る彼。仕事中に泣き言を言って周囲を不安にさせる男性は、信用を失ってしまうかも...。スランプに負けないように、これからは感性豊かなご自分の体質にあった事を更に大事にされるといいかもしれません。
最後はソプラノ専門の阿部朋子さん。声楽家は伴奏者との相性が大切であるということが、阿部朋子(ソプラノ)・高山幸子(伴奏)組みを見ていて改めてよくわかります。比較的、繊細な歌声を持っている阿部朋子さんを、根気強く、力強く支えているピアノ伴奏者の高山幸子さん。2人の息はとても合っているので、末永く仲良くしてもらえればと思います。この日は、一般的によく知られるプッチーニのオペラ歌曲「私のお父さん」のほか、「霧と話した」「落葉松」という渋い日本歌曲も歌いました。歌の内容は「愛」のストーリーではあるものの、放縦な愛情表現とは違い、わびさびに満ちたひっそりと忍ぶ愛。今度は、是非、ライトの落ちた暗いホールでしんみり味わってみたいものです。朋子さんの切々とした声が私たちの胸の奥に響くことでしょう。
わたくしは相変わらず自分の好きな曲を弾いて、好きな事をしています。自分本位でマイペースですから、パーティーの世話焼きも、細かい雑用も、すべて自分の好きでやっています。貧乏臭いのは好きじゃないのですが、仕事を通して意外にもマメな自分を発見しました。音楽ジャーナリストの池田卓夫さんには、毎度お世話になっています。池田氏の言葉の切れ味はさることながら、司会/進行…いわゆる現場の仕切人としての立ち回りの良さ、演出上手な愛嬌、、すべて貴重な力として感謝します。
LOVERSIONも私も、毎年毎年、成長していく所存です。丁寧な気持ちで丁寧な行動を心がけ、目の前にある「心」を大切にしたいと思います。今後ともどうぞよろしくお願い致します。
音楽ジャーナリスト・池田卓夫編
written by 池田卓夫(いけだ・たくお)
和田七奈江のLoversion Tokyoによるバレンタイン・コンサート@紀尾井町サロンから1カ月。世の話題はホワイトデーに替わっている・・・
今回、和田は冒頭に自作2曲を弾いただけでホステス役に回り、オーディション合格者3人の演奏がメインとなった。
上野学園を今春卒業した川端優也はシューマンの「幻想曲ハ長調」の第1楽章。まだ全曲を通して演奏した経験がないという段階で、3楽章構成の作品の第1楽章だけを弾くのは、実は、とても難しいことなのだと痛感した。この作品に潜むエロスの深淵を探り当てるまでに、あとどれだけの時間が必要なのか、見当もつかない。もぎたての素材の魅力に敬意を表し、今後に期待しよう。
この日は私の友人でクロアチアのザグレブに学んだピアニスト、安達朋博がソプラノのMさんとサロンの下見を兼ね、来てくれた。何と七奈江後援会長の井中先生は安達の師、ザラフィアンツと親しく、クロアチアの写真展を開いた医師仲間の女医さんも同じテーブル。世の中狭いということにちなみ、安達にも急きょ1曲、クロアチアの女性作曲家で今年が没後90年のペヤチェヴィチが書いた花の曲集から「薔薇」を弾いてもらった。さすがに演奏歴10年、日本デビュー5年の蓄積は違う。
後半は先ず常連の樋口俊明が女優さんの語りと歌を交え、中国やユーミンの曲をポプリ(接続曲)にして奏でた。最近ピアノの腕前が上がり、バイト先の中華レストランでも演奏しているらしい。彼本来の優しさが素直に音に乗り、柔らかく心にしみる音楽を奏でるようになった。
最後はソプラノの阿部朋子。プッチーニのオペラ・アリアと日本の曲を2つのパートに分けて歌った。オペラの部分には予め粗筋を書いたメモをつくって来られたので、司会者の私が代読。そのままでは真面目に響き過ぎるので適宜、きわどいジョークを交えながら喋った。この人はグレートヴォイスではないのだが、一つ一つの言葉を慈しみながら、しっとりと伝える資質、気品に恵まれている。愛を語るバレンタインデーの締めにふさわしい、情感豊かな時が流れた。